赤い公園の4thフル・アルバム『熱唱サマー』は、赤い公園のヴォーカル佐藤千明が全身全霊を込めて熱く唄った、この夏のための記録だ。

初フル・アルバム『公園デビュー』の、女子バンドらしからぬアヴァンギャルドにしてポップな楽曲の鮮烈な残像を今も浮かび上がらせながら、亀田誠治に蔦谷好位置という手練れプロデューサーに鍛えられた間口の広げ方を見事に吸収し、非凡な楽曲制作能力を持つ津野米咲(G)がその才を開花させてきたフィールドでもある赤い公園は、高校で一つ先輩だった津野のリーダーシップのもと、他の3人と共に確実にバンドとしてのポテンシャルを上げながら、メジャーデビュー後の4年を過ごしてきた。その集大成として『熱唱サマー』がある。

2017年の初頭に「にー・しー・ろー」と謎の告知をして、2月は攻めの「闇夜に提灯」、4月はクールな「恋と嘘」、そして王道を踏み荒らすパワーロック「journey」を6月にリリースしてきた。この前振りは彼らの全方位性を予感させていたが、いざ『熱唱サマー』を聴けばそんな予感を吹っ飛ばすエネルギーに圧倒される。

パワフルなバンドサウンドに分厚いブラスを重ねた乾いたグルーヴに歌詞ともども引き込まれずにいられない「カメレオン」が「闇夜に提灯」を有無を言わせず聴かせ、B級SFみたいなサウンドに乗せて宇宙人並みの言葉を超えた交信すなわち阿吽が伝わらない切なさに泣く「AUN」から、ストリングスが入る美メロ曲「最後の花」で最後の花火を打ち上げる。この曲のアレンジは、活動休止中のPay money To my PainのメンバーPABLO a.k.a WTF!?だ。次いでシンプルなサウンドで心の内を歌う「ジョーカー」は等身大の赤い公園を見せる曲の一つ。そんな彼らが気合いを入れると亀田誠治がプロデュースした「プラチナ」のダイナミズムも発揮する。夏の思い出を歌った身近な曲がこんな風になることに驚きを覚えるほどだ。

同じく亀田誠治プロデュースのキャッチーな「恋と嘘」は本作のセンター。見栄という嘘を胸に抱えて掻き上げる髪は「セミロング」。ポップな曲にツンデレな乙女心がうずいている。津野の紡ぐメロディに佐藤が素顔で向き合い歌っているような「BEAR」、藤本ひかり(B)と歌川菜穂(D)も一段とパワー発揮して4人がガチで向き合う「ほら」は直球バンド・サウンドで過去・現在・未来への思いを切実に歌う。どちらを向いても不安だらけだけれど、自分を信じて立っているのが赤い公園のスタンスだ。そんな青春の1ページを描いた「journey」は小気味のいい自己肯定ソング。媚びず甘えず醒めすぎず、不安も希望も丸ごと抱えて進んできた、結成以来の7年、メジャーデビューしてからの4年。そんな来し方とまだ見ぬ未来への思いが詰め込まれたこの曲のイントロで、佐藤がシャウトする”間違いだらけの答えになれ!”とは、まさに青年の主張。人生の結論には程遠いこの瞬間に正解などいらないのだ。最後に佐藤がもう一度同じフレーズを力一杯歌う。それは自分への、そして赤い公園へのエールのようにも聴こえる。ラストを飾る「勇敢なこども」はコーラスで始まるホノボノした曲だが、自分たちの未来への希望を繋ぐ曲のように思えてならない。4人はこれからも勇敢なこどもなのだ。

この作品が完成し、佐藤が脱退を表明した。赤い公園のヴォーカリストとして限界を感じたと言う。津野の才気走った楽曲をポピュラリティのある歌として聴かせるには、パンクもオルタナも飲み込んで複雑なメロディも軽々と歌ってみせる佐藤のヴォーカルは不可欠だと私はずっと思ってきたのだが、本人はそれ以上の高みを目指していたのかもしれない。4人のこれからはさておき、4人がこれまで残してきたものを振り返ると、類稀なバンドであることを改めて実感する。その最新型として『熱唱サマー』を完成させた彼らを、心から頼もしく思う。

 

TEXT BY 今井智子(音楽ライター)